スタッフさんのこと、お客様のこと。
良くなってほしいと思えば思うほど、つい、言いすぎてしまう。
先日、私はそれを見事にやってしまいました。
相談に乗っていたはずが、いつのまにか説教に
ある男性と話していたら、恋愛の話になりまして。
どうやら今、良い感じの女性がいるらしい。何度かデートもしている。連絡も取っている。相手の反応も悪くない。
それ、もう結構いい感じなんちゃうの、と思って聞いていたんです。
「ほんで、どうするん?」
すると。
いやぁ、今の関係もすごく良いんですよね。
だから、この関係を崩したくないというか……。
もちろん、もっと先に進みたい気持ちもあるらしい。
でも、気持ちを伝えて、今の関係がなくなったら……。
で、結局どうするん。笑
聞いているこちらのほうが、ソワソワしてきまして。
気づけば私、完全に問題解決モードです。
「結局、何を守りたいん?」
「今のままにしておくメリットって何?」
「相手の立場になったらどうなん?」
止まらない。笑
途中から彼も、「はい……」「なるほど……」「そうですね……」と、明らかに空気がおかしい。
それでも私は「もう一押しや」くらいに思っている。
そして最後に聞きました。「で、どうするん?」
「一旦、考えます。」
……考えるんかーい。笑
彼は、何も聞いてこなかった
あとになって、本当に反省しました。
彼が優柔不断だったから、ではありません。
そもそも彼は、私に「どうしたらいいですか」と聞いていない。
ただ、今の状況を話していただけです。
私は「思いは伝えたほうがいい」と思っています。伝えなければ何も始まらないし、失敗しても一歩踏み出したほうがいい。今もそう思っています。
でも、それは私の考え方です。
彼には彼の考えがある。そして「今の関係を壊したくない」にも、ちゃんと理由がある。
「決めない」という選択にも、メリットがある
ここが、いちばん大事なところだと思っています。
研修で教えていただいたことがあります。
決断に迷ったときは、紙にT字を書く。左側に「決断するメリット」。そして右側には、デメリットではなく——「決断しないメリット」を書く。
両方、メリットです。
人が何かを決められないとき、その人なりに、決めないことで守っているものがある。
今回の彼なら、伝えるメリットは「関係が進むかもしれない」。伝えないメリットは「今の関係を失わずに済む」。
気まずくならない。振られない。今の楽しい関係を続けられる。
決められないんじゃない。
「今は決めない」というメリットを選んでいるだけなのかもしれません。
だとしたら、私がやるべきだったのは「はよ言うてこい」ではなくて、「あなたは、どっちを選びたいん?」と問いを渡すことだったんですよね。
これは、恋愛の話ではありません
お店に置き換えると、こういう景色になります。
- ホームケアを続けたほうがいいのは分かっているのに、決められないお客様
- もっと踏み込んで提案すればいいのに、いつも一歩手前で止まるスタッフ
- 値上げしないといけないと分かっているのに、来月も据え置きにする自分
私たちはつい、「なぜやらないのか」を考えます。
でも、たいていの場合、答えは「やらないことで守れているものがある」です。
お客様は、いまの出費を守っている。
スタッフは、断られて傷つかない自分を守っている。
そして私たちは、お客様が離れない今日を守っている。
そこに向かって「やったほうがいいですよ」と何度言っても、届きません。
守っているものに、まだ触れていないからです。
「良くなってほしい」が、すり替わる瞬間
あのとき私は、彼に良くなってほしかった。幸せになってほしかった。一歩踏み出してほしかった。
その気持ちが強すぎて、「良くなってほしい」が、いつのまにか「私の思う通りに変わってほしい」に変わっていました。
これ、恋愛相談だけの話ではありません。
スタッフでも。お子さんでも。お客様でも。ご家族でも。
「あなたのためを思って」と言いながら、相手を自分の正解に連れていこうとしていないか。
良くなってほしい人ほど、つい言いすぎてしまう。
でも、自分で気づいて、自分で考えて、自分で決めないと、人は本当には変わりません。
こちらができるのは、考え方を伝えること。選択肢を見せること。問いを渡すこと。
選ぶのは、相手です。
今日、一つだけ
紙とペンをご用意ください。難しいことはしません。
- いま、「変わってほしい」と思っている人を、一人だけ思い浮かべてください。スタッフさんでも、お客様でも構いません。
- 紙にT字を書いて、左にその人が変わるメリットを書いてください。すらすら書けるはずです。
- 右に、その人が変わらないことで守れているものを、一つだけ書いてください。
右側が書けたなら、明日その人に渡す言葉は、たぶん変わります。
「変わったほうがいいですよ」ではなく、「あなたは、どちらを選びたいですか」に。
人は変えられない。人は変わらない。
でも、人は、変われる。
その順番だけは、間違えないようにしたいと思っています。
Rita 1DAY【照】|比叡山と、ものづくりの現場へ 2026年11月17日(火)
「一隅を照らす」という言葉が生まれた比叡山 延暦寺を訪ね、午後は発酵エキスの製造現場を見学します。人を変えることではなく、自分の一隅を照らすことから始める一日です。定員18名。
この記事は、時 昴が配信しているメルマガを、店舗経営の視点で書き直したものです。毎回の配信はこちらから無料でお受け取りいただけます。